ザ・ビートルズ楽曲データベース

Getting Better

邦題
ゲッティング・ベター
作者
Lennon/McCartney(ポールの作品)
リードヴォーカル / コーラス
ポール / ジョン、ジョージ
使用楽器
  • Epiphone Casino(John)
  • Rickenbacker 4001 (Paul)
  • Fender Stratocaster (George)
  • Ludwig (Ringo)
  • Horner Combo Pianet(Paul)
  • Piano (George Martin)
  • Tanpura (George)
  • Bongo (Ringo)
  • Hand Clap

Recording Data ~レコーディング・データ

ビートルズの英国での8枚目にあたるオリジナルアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の4曲目に収録されたナンバー。作者のポールがリード・ヴォーカルをとり、ジョンとジョージがコーラスをつけている。

1966年、ビートルズには様々な変化があった。
前アルバム「リボルバー 」のレコーディング・セッション終了後、ツアーに出たビートルズは1966年8月29日のサンフランシスコ・キャンドルスティック・パークのステージを最後に一切のコンサート活動を停止する。
行く先々でのビートルマニアの熱狂、楽曲の再現の難しさ、そしてあちこちでのトラブルにメンバーは疲れ切っていた。この無意味とも思えるコンサート活動を停止すれば、レコーディングに専念できると考えたのだ。

デビュー以来、守り続けてきた「1年に2枚」のアルバム制作もこの年は初めて守られなかった。
その代わりに、クリスマスシーズン用に初のベストアルバム「オールディーズ」を発売。(未CD化)
11月24日からシングル「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」の録音を皮切りに、「もうステージはやらない」と宣言したビートルズは「架空のバンドがショーをする」というコンセプトアルバムの制作を開始したのである。

この曲は1967年3月9日、アビイ・ロード第2スタジオにて録音が開始された。
ちょっと前までは朝から来て終電までにはセッションを終わらせてたビートルズだが、
この頃になると「ビートルズさん待ち」とも呼べる状況も多くなってきており(要するに『エラなりはった』という意)、この日にジェフ・エメリックの代わりとしてエンジニアを担当していたマルコム・アデイによると
「午後7時からのセッションの予定が、リンゴが来たのは11時でそこからポツリポツリとメンバーが集まりだして、結局この日は午前1時頃からセッションが開始された。」という事だそうだ。

ビートルズはこの日、リズムトラックを7テイク録音。
ギター×2、ベース、ドラムス。マーティン卿のピアノの編成である。
ただし、マーティン卿はピアノを鍵盤ではなく直接弦を叩いていたそうだ。
ベストの第7テイクの4トラック全ての音を、別のレコーダーの1トラックにミックスダウンする作業が5回行われて5回目を第12テイクとしてリズム・トラックの制作を終える。

翌日の1967年3月10日にジョージのタンブーラ、ポールのベース、リンゴのドラムを追加。

1967年3月21日にヴォーカルとコーラスが録音された。
この日、リンゴのコーラスを録音する必要がなかったために、彼は家で休んでいた。
しかしポールが「ドラムを録音しなおすべきだ」と主張したために、リンゴは電話で呼び出される。
ポールはリンゴが来るまでの間、ジェフ・エメリックらとフェーダー操作をしながらこの曲を何度も聞き返すうちに
「やっぱオリジナルレコーディングでいけるわwww」と言い出して、リンゴの家にキャンセル電話を入れる。
しかし、リンゴはもう車でスタジオに向かってる途中だった・・・・・・・。
ここらへんからポールの「周りの見えなさっぷり」が発揮されてきている、という格好のエピソードではある。

ジョンもこの日、体調が悪くて「気分が悪いので休憩したい」と言い出した。
マーティン卿は外の空気を吸わせるのが一番だと思ったが、スタジオの周りにはファンがうろついてるので危険と判断して、ジョンを屋上に連れて行ったそうだ。
しばらくしてポールが「あれ?ジョンは?」と聞くのでマーティン卿は「屋上だよ」と答えたのだが
やがてポールの血相が変わる。ポールはなぜジョンの体調が悪いかを知っていたからだ。
この時、ジョンはLSDのバッド・トリップ真っ最中だったのである。
スタジオの屋上は柵も何も設置されていない事を思い出したメンバーは、慌ててジョンを引きずりおろしたそうである。

この日は第12テイクをリダクションして、空きトラックを作り第14テイクを作成。

1967年3月23日。
例のジョンの事もあり、この日ボーカルセッションをやり直して、再度リダクションを行い第15テイクを作成。
最後にリンゴのボンゴを録音してこの曲は完成に至った。

Out Takes ~ミックス、テイク違い&リマスター

  1. 2017年に発売されたこのアルバムの50周年記念盤「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)」にテイク1およびテイク12(共にボーカルはなし)が収録されている。
    興味深いのはテイク1の方で、ギター2本、そしてベース、ドラム、エレピの音が確認出来るのですが曲が始まる前に一瞬だけベースにファズがかかってるのが驚き。これは1967年3月9日のレコーディング初日のテイクだと思われます。
    ザ・ビートルズ レコーディング・セッションには「マーティン卿はピアノ。だが直接弦を叩いていた」と書かれてましたが、このテイク1の段階だとマーティン卿はエレピを弾いていたと思われます。(弦を直接叩いてこんなプレイは絶対に出来ませんのでw)
    ポールもリリーステイクの様なオクターブを駆使したあのプレイはしていないのであくまで仮のプレイ。なのでテイクを進めて行く段階で「後からちゃんと録音しよう」とベースを置いたのかもしれません。

    続く、テイク12はザ・ビートルズ レコーディング・セッションによると「1967年3月9日の第12テイクがベストとなった」と書かれておりますが、このテイク12はタンブーラ、ベースが入ってるので翌日の1967年3月10日の「12テイクへのスーパーインポーズ」されたテイクでしょう。
    ただベースラインがリリースされた物とは違うので、1967年3月21日に再度録音しなおしたのかな。
    そして、その日はジョンがLSDでトリップして屋上から引きずり降ろされた日なのでした。

An anecdote ~ こぼれ話

  1. この曲が出来たきっかけは二つ。
    ポールが愛犬マーサを連れて散歩しているときに、春の陽気の気持ちよさに「It's Getting Better!」と言ったこと。
    そして、過去リンゴが病気でライブを休んだ時の代役ドラマー、ジミー・ニコルの口癖が「だんだんよくなってくるよ。(いずれ(演奏も)しっくりくるようになる)」だった事から、この曲を書いたそうである。
  2. ジョンも一部作詞に貢献している。
    コーラスの歌詞を知らなかったジョンは、題名から適当に「It can't get no worse(これ以上悪くはならない)」と歌ってしまい、それが採用されたそうだ。「だんだんよくなるさ!」という前向きなポールの歌詞と「これ以上悪くはならない」という後ろ向きなジョンの歌詞が絶妙に絡みあっている。

各種聴き放題サービスでのビートルズ作品の取り扱い状況

Amazonプライムミュージック

ビートルズ・オリジナルアルバムはAmazonプライムの特典である「Amazon Prime Music」で「ウィズ・ザ・ビートルズ」「ビートルズ・フォー・セール」「イエロー・サブマリン」を除いて聴き放題に含まれています。(いずれも2009年リマスターのみ)

Amazonジャパンのプレスリリースはこちら。

なぜこの3つが省かれているのかが謎ですが、単体での購入もお忘れなくという事なのかも知れません。
Amazonプライムはお急ぎ便の使用や送料無料、プライムビデオなど様々な特典を含んで月間400円、年間3,900円という価格で提供されています。
ちなみにプライムビデオの方では無料のビートルズ映像作品はありませんでしたし、公式の映画やコンサートフィルムは取り扱い自体がありませんでした。
頻繁にAmazonを使う、という事であれば加入するのもよいかも知れませんがビートルズを全て楽しみたい!という方には微妙かも。

Google Play Music

Googleが提供しているGoogle Play Musicの状況はオリジナルアルバム(アンソロジー3つ、ハリウッドボウル、サージェントペパーの50周年含む)は全て配信されていますが、BBCセッション、レット・イット・ビー・ネイキッドは見当たりませんね。その代わりトニー・シェリダンものやハンブルグものなど少々怪しそうな物もラインナップされてるのがちょっと面白いです。
こちらは月額980円です。公式サイトはこちら

Spotify

Spotifyでの状況はGoogle Play Musicと同じ取り扱い状況ですが、時折広告が入ったり使用時間の制限があるものの公式アルバムの曲は全曲聴けるようになっています。
この制限を外したり、ダウンロード可能にするには月額980円の使用料が必要になります。
公式サイトはこちら

Apple Music

音楽配信サービスの大御所(笑)といえばやっぱりAppleですが、ビートルズの取り扱い状況は他よりも充実しており、BBCセッション、ネイキッド、イエロー・サブマリンソングブック、そしてなんとU.S.Albums(!)も含まれています。但しこれらは単体購入のみでしか聞けないものもあります。

オリジナルアルバム、アンソロジー3つ、ハリウッドボウル、サージェントの50周年エディションまでが聴き放題プランの中に含まれているので、ビートルズを楽しみたいのであればApple Musicが今の所最良の選択と言えるでしょう。

惜しむらくはモノラル盤の取り扱いがないところですが、AppleにはiTunes独占配信だった「The Beatles Bootleg Recordings 1963」があるのが大きいですね。
このアルバムも月額プランで聴けるものの中に入っています。

月額プランは個人では980円。ファミリープラン、1480円もありこちらはこの金額で6人までアクセス可能です。

参考文献

ビートルズ公式録音曲213曲を徹底的に解説!テイク違いやミックス違い、そして2009年リマスターについてを動画等を交えて書き連ねています。

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