ザ・ビートルズ楽曲データベース

I Me Mine

邦題
アイ・ミー・マイン
作者
Harrison (ジョージの作品)
リードヴォーカル / コーラス
ジョージ / ポール
使用楽器
  • Piano (Paul)
  • Rickenbacker 4001(Paul)
  • Gibson J-200 (George)
  • Fender Telecaster (George)
  • Ludwig (Ringo)
  • Hammond Organ
  • Orchestra

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Recording Data ~レコーディング・データ

ビートルズの12枚目の英国オリジナルアルバム、そしてラストアルバムとなった「レット・イット・ビー」の4曲目に収められているナンバー。
1970年5月8日に発売されているこのアルバムだが、録音は前アルバム「アビイ・ロード」より前に行われている。
作者のジョージがリード・ヴォーカルを取っており、ポールがコーラスをつけている。
なお、このレコーディングにはジョンは不参加。
この曲がビートルズとしての最後のセッション曲となった。

1969年1月2日から始まったトゥイッケナム・フィルム・スタジオでのリハーサルでこの曲は演奏されている。
映画「レット・イット・ビー」でこの曲に合わせてワルツを踊るジョンとヨーコの姿を見る事ができる。
しかし、「アクロス・ザ・ユニバース」同様に、1月22日からのアップルスタジオでのセッションは取り上げられず、
この曲のマルチ・トラック・レコーディングは行われなかった。

この曲が録音されたのは1970年1月3日。アビイ・ロード第2スタジオ。
公開予定の映画にこの曲が演奏されている場面があり、映画との整合性をとるためにこの曲を録音する事になった。
ジョンを除く3人はポール(ベース)、ジョージ(アコースティック・ギター)、リンゴ(ドラム)の編成で
この曲を16テイク録音し、第16テイクにピアノ、エレキギター、オルガン、ヴォーカル、コーラスをオーバーダブ。
この時点でこの曲は1分34秒の長さしかなかった。

1970年1月5日。
グリン・ジョーンズはこの日、アルバム「ゲット・バック」を再度リミックスする。
映画が公開される事が決まったために、映画との整合性をとるためにこの曲を「ゲット・バック」に収録する事に決定。
しかし、この2度目の「ゲット・バック」も結局は未発表となる。

1970年3月23日。
すでにアルバム「ゲット・バック」は闇に葬られ、アルバム「レット・イット・ビー」としての制作がこの日始まった。
プロデューサーのフィル・スペクターは「映画とアルバムの整合性をとる」という依頼に基づき
映画で演奏されていたこの曲の収録を決める。
この日は後日行われるオーケストラのオーバーダブのためのリミックスが行われる。
フィル・スペクターは巧みな編集作業を行い、この曲の演奏時間を2分25秒に伸ばしている。

1970年4月1日。ビートルズ名義で行われた最後の録音セッション。
この日はリンゴだけが参加してドラムを叩き、女声コーラス14名+オーケストラ36名のオーバーダブが行われた。

About from "Get Back" to "Let it be" ~アルバム発売までの経緯

1968年10月に「ザ・ビートルズ」 (通称:ホワイト・アルバム)のセッションが終了。
マネージャーだったブライアン・エプスタインの死後、船頭を失ったビートルズはアップルの設立など、
半ば無茶とも思える試みを行ってきた。
華々しく見えたビートルズの前途であったが、内部はすでにバラバラの状態だったのである。

当時グループを引っ張る立場であったポールはある提案をする。
混沌とする活動状況を打破する為に、ポールが打ち出したのは「原点に帰る」というコンセプトだった。
デビュー時の様にオーバーダブなしのライブでアルバムを制作しコンサートツアーを行う、という企画である。
しかし、アルバム制作は了承したものの、他の3人(特にジョージ)はツアーには難色を示す。
妥協案として1度だけのコンサートも企画されたが、これも結局流れてしまった。

最終的にリハーサルなどを含むドキュメンタリーを制作しテレビで放送する、という事で合意した4人は
1969年1月2日にトゥイッケナム・フィルム・スタジオに姿を現し、リハーサルと撮影、録音を開始する。
「ゲット・バック(原点に帰る)・セッション」の始まりである。

しかし、いつも撮影されているというプレッシャー、そして薄ら寒いだけの撮影スタジオという慣れぬ環境。
張り切るポールはあれやこれやとジョージに指示、ジョージはそれに反発して口論となり
5ヶ月前にリンゴがしたように、1月10日にスタジオを飛び出してしまう。
数日後にジョージは復帰するが、テレビショウに関しては意見を曲げず、結局この企画は流れてしまう。

ビートルズは結局、トゥイッケナム・フィルム・スタジオでのリハーサルを中止し、
自らが作ったアップル・スタジオに移動して、1969年1月22日からセッションを再開。
ジョージはこの日たまたまアップルに居合わせたキーボード奏者、ビリー・プレストンをセッションに誘う。
外面の良いジョンとポールに対して、外部の人間を引き入れるのは効果的だった。

映像撮影、そして「オーバーダブをやらない」というコンセプトのアルバム制作は続行されるものの
1969年1月30日のアップルビル屋上での「ルーフ・トップ」コンサート、そして翌日のスタジオセッションをもってセッションを中断。
総時間、90時間以上の撮影・録音テープを残したまま、ビートルズはアップルスタジオを去った。

2月22日には「アビイ・ロード」に収録される「アイ・ウォント・ユー」の録音をトライデントスタジオで開始。
そして3月の初旬、ジョンとポールはグリン・ジョーンズに1月のセッションテープからアルバムを作る事を依頼する。
4月11日にこのセッションからのシングル「ゲット・バック / ドント・レット・ミー・ダウン」がまず発売された。
4月14日にはジョンとポールが二人で「ジョンとヨーコのバラード」を録音。これは5月30日に発売された。

そして5月28日。グリン・ジョーンズはアルバム「ゲット・バック」を完成させる。
このアルバムのためのフォトセッションも行われた。
デビューアルバムと同じ場所、同じ構図での写真撮影はこの時のメンバーの意気込みを感じさせたが
このアルバムは発売延期の声明が出された。
しかし後に、北米のラジオ局用に作ったサンプル盤からこのアルバムの海賊盤が作成される事になる。

Album[GetBack]
現在出回っている海賊盤「ゲット・バック」のジャケット
この写真は後にベスト盤「ザ・ビートルズ 1967年-1970年(通称:青盤)」に使用された。

この後7月からはアルバム「アビイ・ロード」のセッションが本格化。
そして9月26日にアルバム「アビイ・ロード」が発売。
アルバム「ゲット・バック」の事は誰もが忘れかけていたが、1月の撮影フィルムを映画にする事だけは決まっていた。

年が明けて1970年1月3日。
あの悪夢のトゥイッケナムからちょうど1年後のこの日、ビートルズ(ジョンを除く)はアビイ・ロードに集まる。
正式な録音がされていなかった「アイ・ミー・マイン」の録音のためである。
これは映画との整合性を図るために追加で行われたセッションだった。。
そして1月4日のセッションがビートルズとしての最後の録音セッションとなった。

未だに「延期」としてアナウンスされているアルバム「ゲット・バック」は
1月5日に収録曲を入れ替えて再度グリン・ジョーンズによって制作される。
3月6日にはラスト・シングルとなった「レット・イット・ビー」が発売されるが、アルバム「ゲット・バック」は結局発売されなかった。

1月27日。
アビイ・ロードスタジオでジョンは自己のソロ名義であるプラスティック・オノ・バンドの3枚目のシングルである「インスタント・カーマ」を録音開始。
このレコーディングのプロデュースは、名プロデューサーであるフィル・スペクターであった。
ジョージもギターでこのレコーディングに参加。二人はフィルの仕事ぶりに大変感銘を受ける。

そしてジョンとジョージは「ゲット・バック(になるはずだった)」のマスターテープをフィル・スペクターに託す。
俺達と仕事がしたけりゃこの膨大なクズテープをアルバムに仕上げてくれ。
フィル・スペクターは自分の持ち味であるオーケストラと女声コーラスなどを加えた「ウォール・オブ・サウンド」で処理を行い、アルバム「レット・イット・ビー」として制作が開始される。

ポールはこの決定を聞かされておらず、自分の楽曲に過剰なアレンジをされた事に激怒した。
そして4月10日。デイリー・ミラー紙がポールのインタビューをスッパ抜く。
今後ビートルズのメンバーと作曲することはない」(ソロアルバム「マッカートニー」の販促物より)
4月17日にこのソロアルバム「マッカートニー」は発売され、ジョンは「脱退宣言を(自分のアルバムの)宣伝に使った。」としてポールを激しく批難した。

もはやこの時点でビートルズとしての活動は望むべくもなかった。

ラストアルバムとなった「レット・イット・ビー」は1970年5月8日に発売された。
ここに4人の伝説は幕を閉じたのである。

撮影されたフィルムは映画「レット・イット・ビー」として1970年5月20日に公開された。
バラバラになりつつある4人の姿がこの映画にはありありと映し出されている。

その後、ゲット・バック・セッションの膨大なテープは流出し大量の海賊盤を生み出す事となった。

2003年にはリミックスアルバム「レット・イット・ビー...ネイキッド 」が発売された。
これは「当初出すつもりだったオーバーダブなどを含まないアルバム」としてのコンセプトに乗っ取り、現在のアビイ・ロード・スタジオのエンジニアが、当時のマスターテープから改めてリミックスしたものである。
ジョージ・マーティンやビートルズのメンバーはこのアルバムの制作には一切関わっていない。
たまに「レット・イット・ビー」のアルバムから音を取り除いた、と表現される事があるが間違いである。
実際に異なるテイクを繋ぎ合わせたりの処理が行われているし、アルバム「レット・イット・ビー」に使用されたテイクとは明らかに違う曲もある。

またこの「ネイキッド」は当時制作されたアルバム「ゲット・バック」とは全く違うものである事も表記しておく。

Out Takes ~ミックス、テイク違い&リマスター

  1. The Beatles Anthology 3」に、1970年1月3日の第16テイクが収録されている。
    長さも1分34秒のままで、オーケストラはオーバーダビングされていない。
  2. レット・イット・ビー...ネイキッド 」には長さが2分21秒(若干フェイドアウトが早い)のオーケストラなしのものが収録されている。歌詞の順番が異なる編集がされている。

An anecdote ~ こぼれ話

  1. この曲は「オレが、オレが、オレが」という自己主張の激しい人をジョージが皮肉った歌である。
    時期的にもポールの事を歌っていると思われるが、ジョージ自身は「バガヴァッド・ギーター」というインドの宗教書の一節を基にしたと語っている。

各種聴き放題サービスでのビートルズ作品の取り扱い状況

Amazonプライムミュージック

ビートルズ・オリジナルアルバムはAmazonプライムの特典である「Amazon Prime Music」で「ウィズ・ザ・ビートルズ」「ビートルズ・フォー・セール」「イエロー・サブマリン」を除いて聴き放題に含まれています。(いずれも2009年リマスターのみ)

Amazonジャパンのプレスリリースはこちら。

なぜこの3つが省かれているのかが謎ですが、単体での購入もお忘れなくという事なのかも知れません。
Amazonプライムはお急ぎ便の使用や送料無料、プライムビデオなど様々な特典を含んで月間400円、年間3,900円という価格で提供されています。
ちなみにプライムビデオの方では無料のビートルズ映像作品はありませんでしたし、公式の映画やコンサートフィルムは取り扱い自体がありませんでした。
頻繁にAmazonを使う、という事であれば加入するのもよいかも知れませんがビートルズを全て楽しみたい!という方には微妙かも。

Google Play Music

Googleが提供しているGoogle Play Musicの状況はオリジナルアルバム(アンソロジー3つ、ハリウッドボウル、サージェントペパーの50周年含む)は全て配信されていますが、BBCセッション、レット・イット・ビー・ネイキッドは見当たりませんね。その代わりトニー・シェリダンものやハンブルグものなど少々怪しそうな物もラインナップされてるのがちょっと面白いです。
こちらは月額980円です。公式サイトはこちら

Spotify

Spotifyでの状況はGoogle Play Musicと同じ取り扱い状況ですが、時折広告が入ったり使用時間の制限があるものの公式アルバムの曲は全曲聴けるようになっています。
この制限を外したり、ダウンロード可能にするには月額980円の使用料が必要になります。
公式サイトはこちら

Apple Music

音楽配信サービスの大御所(笑)といえばやっぱりAppleですが、ビートルズの取り扱い状況は他よりも充実しており、BBCセッション、ネイキッド、イエロー・サブマリンソングブック、そしてなんとU.S.Albums(!)も含まれています。但しこれらは単体購入のみでしか聞けないものもあります。

オリジナルアルバム、アンソロジー3つ、ハリウッドボウル、サージェントの50周年エディションまでが聴き放題プランの中に含まれているので、ビートルズを楽しみたいのであればApple Musicが今の所最良の選択と言えるでしょう。

惜しむらくはモノラル盤の取り扱いがないところですが、AppleにはiTunes独占配信だった「The Beatles Bootleg Recordings 1963」があるのが大きいですね。
このアルバムも月額プランで聴けるものの中に入っています。

月額プランは個人では980円。ファミリープラン、1480円もありこちらはこの金額で6人までアクセス可能です。

参考文献

ビートルズ公式録音曲213曲を徹底的に解説!テイク違いやミックス違い、そして2009年リマスターについてを動画等を交えて書き連ねています。

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