ザ・ビートルズ楽曲データベース

Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band

邦題
サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
作者
Lennon/McCartney(ポールの作品)
リードヴォーカル / コーラス
ポール / ジョン、ジョージ
使用楽器
  • Epiphone Casino (John)
  • Rickenbacker 4001 (Paul)
  • Gibson ES-355? (Paul,George)
  • Ludwig (Ringo)
  • Horn Quartet

Recording Data ~レコーディング・データ

ビートルズの英国での8枚目にあたるオリジナルアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の1曲目に収録されたミディアムテンポのタイトルナンバー。作者のポールがリード・ヴォーカルをとり、ジョンとジョージがコーラスをつけている。
後年のアニメ映画「イエロー・サブマリン」にも使用され、1999年にはビートルズ初のリミックス・アルバム「イエロー・サブマリン~ソングトラック~」が発売されたが、そこにもリミックスバージョンが収録されている。

このアルバムは「架空のバンドがショーを行う」というコンセプトアルバムになっていて、この曲はショーを見に来た人を迎え、バンドが自己紹介を行う「ウェルカムソング」として作られている。

1966年、ビートルズには様々な変化があった。
前アルバム「リボルバー 」のレコーディング・セッション終了後、ツアーに出たビートルズは1966年8月29日のサンフランシスコ・キャンドルスティック・パークのステージを最後に一切のコンサート活動を停止する。
行く先々でのビートルマニアの熱狂、楽曲の再現の難しさ、そしてあちこちでのトラブルにメンバーは疲れ切っていた。この無意味とも思えるコンサート活動を停止すれば、レコーディングに専念できると考えたのだ。

デビュー以来、守り続けてきた「1年に2枚」のアルバム制作もこの年は初めて守られなかった。
その代わりに、クリスマスシーズン用に初のベストアルバム「オールディーズ」を発売。(未CD化)
11月24日からシングル「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」の録音を皮切りに、「もうステージはやらない」と宣言したビートルズは「架空のバンドがショーをする」というコンセプトアルバムの制作を開始したのである。

この曲は1967年2月1日、アビイ・ロード第2スタジオにて録音が開始された。
9テイクのリズムトラックを録音(その中で完全に演奏されたのは第1、第9テイクでベストは第9テイク)。
ポールはこの時、はじめてベースをアンプ→マイクという方法をとらずにミキサーに直接つないだ。
今で言う「ライン録り」である。DIボックスはエンジニアのケン・タウンゼントがその場で制作した。

余談だがこのDI(ダイレクト・インジェクション)に大層、興味を持ったジョンは常に自分の声になにか変化をつけれるかも、と思って「僕のボーカルを直接ミキサーに繋げれるかな?」と聞いたそうである。
ジョージ・マーティンは「君がノドにジャックを差し込めるように手術を受ければOKさ」と答えたそうな。

翌日の1967年2月2日。空いてる2トラックにポールのボーカルと、ジョンとジョージのコーラスを録音。
空きトラックを作るために、ピンポンを行った。

約1ヶ月後の1967年3月3日。
「架空のバンドがショーを行う」という設定にした以上、ブラスセクションが必要と考えたメンバーは4人の外部ミュージシャンを呼んでオーバーダブを行う。
4人の外部ミュージシャンが帰った後に、メンバーはリード・ギターをオーバーダブした。
(「ビートルズ・レコーディング・セッション」には「ジョージが中心となって」と書いてあるが、このリードギターはポールによって演奏されたものである。)

そして1967年3月6日。
この曲がアルバムの1曲目になる事が決まったので、ポールの「お客がそこにいて、バンドがウォーミングアップしている雰囲気が出せればよくない?」というアイデアを実践すべく、SEのオーバーダブを施す。
まず、ウォーミング・アップの音は先日1967年2月10日に行われた「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のオーケストラ・セッションの際に録音された物を流用。
冒頭の観客のざわめきは、アビイ・ロード・スタジオの倉庫にあったライブラリテープ、「第28巻:観客の喝采と観客のざわめき、ロイヤル・アルバート・ホールおよびクイーン・エリザベス・ホールにて録音」から流用。
次の曲、「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」へのつなぎ目部分に挿入された観客の絶叫は、この当時録音だけされて発表の予定もなかった「ビートルズ・スーパーライヴ!(The Beatles at the Hollywood Bowl)」(未CD化)から流用されたものである。

このオーバーダブを終えて、この曲は完成に至る。

Out Takes ~ミックス、テイク違い&リマスター

  1. 2017年に発売されたこのアルバムの50周年記念盤「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)」にテイク1が収録されている。
    このテイクはギター×2、そしてドラムのみで演奏されておりボーカルはまだ入っていない。
    リズムを刻んでいる方のギターはジョンなのは間違いないだろうが、リードを弾いているのはポールなのかジョージなのかはちょっと微妙な所。リミックスの際にベースが省かれたりしてるかもしれないし、もしかしたらポールは他の3人にアイコンタクトで曲の構成を説明していたのかもしれません(笑)
  2. 同じく上記の50周年記念盤にテイク9も収録されている。
    こちらはリリースされた物と比べてイントロのリードギターが入っておらず(これを後からポールがオーバーダブしたと思われる)ホーンセクションも入っていない。
    ポールのリードボーカルはリリースされた物と同じテイクだがコーラス部分が若干薄い気が・・
    1967年2月2日に空きトラックを作るためにピンポンする直前のテイクであろうか。
    歌い終えた後の会話はだいたいこんな感じ。
    ポール:「これはダメかな。きっと後日に歌い直すかも」
    ジョン:「聞いてたけどよかったよ」
    ジョージ:「ちょっと息継ぎがうまくいってなかった気がせんでもないかなあ」
    ポール:「んじゃ、君やってみる?」

An anecdote ~ こぼれ話

  1. 架空の人物ペパー軍曹が進行役兼ボーカルとして歌うこの曲は、次の曲である「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」を歌う人物のビリー・シアーズ(演者:リンゴ)を紹介して終わる。ペパー軍曹が進行役を務め、そしてアルバムの終盤で同じ曲を繰り返す事を提案したのは、ロード・マネージャーだったニール・アスピノールである。
  2. このアルバムが発売されてから3日後に、ジミ・ヘンドリックスがイギリスでライブを行った。
    その時のオープニングがこの曲で、観客席にいたポールはいたく感動したそうである。
  3. ライブ活動を中止していたビートルズは4人でこの曲をライブ演奏した事はない。
    しかし解散後の1979年5月19日、エリック・クラプトンの結婚式において、ポール、ジョージ、リンゴ+エリック・クラプトンでのこの曲を演奏した。

各種聴き放題サービスでのビートルズ作品の取り扱い状況

Amazonプライムミュージック

ビートルズ・オリジナルアルバムはAmazonプライムの特典である「Amazon Prime Music」で「ウィズ・ザ・ビートルズ」「ビートルズ・フォー・セール」「イエロー・サブマリン」を除いて聴き放題に含まれています。(いずれも2009年リマスターのみ)

Amazonジャパンのプレスリリースはこちら。

なぜこの3つが省かれているのかが謎ですが、単体での購入もお忘れなくという事なのかも知れません。
Amazonプライムはお急ぎ便の使用や送料無料、プライムビデオなど様々な特典を含んで月間400円、年間3,900円という価格で提供されています。
ちなみにプライムビデオの方では無料のビートルズ映像作品はありませんでしたし、公式の映画やコンサートフィルムは取り扱い自体がありませんでした。
頻繁にAmazonを使う、という事であれば加入するのもよいかも知れませんがビートルズを全て楽しみたい!という方には微妙かも。

Google Play Music

Googleが提供しているGoogle Play Musicの状況はオリジナルアルバム(アンソロジー3つ、ハリウッドボウル、サージェントペパーの50周年含む)は全て配信されていますが、BBCセッション、レット・イット・ビー・ネイキッドは見当たりませんね。その代わりトニー・シェリダンものやハンブルグものなど少々怪しそうな物もラインナップされてるのがちょっと面白いです。
こちらは月額980円です。公式サイトはこちら

Spotify

Spotifyでの状況はGoogle Play Musicと同じ取り扱い状況ですが、時折広告が入ったり使用時間の制限があるものの公式アルバムの曲は全曲聴けるようになっています。
この制限を外したり、ダウンロード可能にするには月額980円の使用料が必要になります。
公式サイトはこちら

Apple Music

音楽配信サービスの大御所(笑)といえばやっぱりAppleですが、ビートルズの取り扱い状況は他よりも充実しており、BBCセッション、ネイキッド、イエロー・サブマリンソングブック、そしてなんとU.S.Albums(!)も含まれています。但しこれらは単体購入のみでしか聞けないものもあります。

オリジナルアルバム、アンソロジー3つ、ハリウッドボウル、サージェントの50周年エディションまでが聴き放題プランの中に含まれているので、ビートルズを楽しみたいのであればApple Musicが今の所最良の選択と言えるでしょう。

惜しむらくはモノラル盤の取り扱いがないところですが、AppleにはiTunes独占配信だった「The Beatles Bootleg Recordings 1963」があるのが大きいですね。
このアルバムも月額プランで聴けるものの中に入っています。

月額プランは個人では980円。ファミリープラン、1480円もありこちらはこの金額で6人までアクセス可能です。

参考文献

ビートルズ公式録音曲213曲を徹底的に解説!テイク違いやミックス違い、そして2009年リマスターについてを動画等を交えて書き連ねています。

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