ビートルズの12枚目の英国オリジナルアルバム、そしてラストアルバムとなった「レット・イット・ビー」の3曲目に収められているナンバー。
1970年5月8日に発売されているこのアルバムだが、録音は前アルバム「アビイ・ロード」より前に行われている。
作者のジョンがリード・ヴォーカルを取っている。
この曲に関しては2つの異なるバージョンが正規盤としてリリースされた。
録音開始されたのは1968年2月4日。ビートルズがインドへ旅立つ直前に行ったセッションである。
この時期のセッションではシングル「レディ・マドンナ」「ジ・インナー・ライト」が録音されたが
「アクロス・ザ・ユニバース」も当初はシングル曲候補だった。
そして「レディ・マドンナ」がA面としてリリースされる事がまず決まり、この曲がB面曲になるはずであったが、「ジ・インナー・ライト」の出来がよかった事、そしてジョンがこの曲の仕上がりに満足しなかった事もあってこれを拒否。
後に、EP「Yellow Submarine」が企画されて、ここに収められるはずだったが企画自体がなくなってしまう。
ジョンは1967年12月に設立された「世界野生動物基金」のチャリティアルバムにこの曲を寄付する事を決定。
しかしこのアルバムが発売されるのは、1969年の12月になる。
1968年2月4日のアビイ・ロードスタジオでのセッションでは、
ジョンのアコースティックギター、リンゴのドラム、ジョージのタンブーラ等の編成で
様々な試行錯誤を繰り返して7テイクを録音する。
ポールは「女声コーラスがいる」と判断して、スタジオの前でたむろしていたファンを2人選んでスタジオに招く。
このファンの女性、リジー・ブラヴォーとゲイリーン・ピースの二人が、
サビの「Nothing's gonna change my World」のユニゾンコーラスを第7テイクに録音した。
このセッションの後、リダクションを行って第8テイクを作成し、逆回転のベースとドラムをオーバーダブする。
1968年2月8日。アビイ・ロード第2スタジオ。
この段階でもジョンはどんなアレンジにすればいいか迷っていたようである。
ジョンはメロトロンを、ジョージ・マーティンはオルガンを弾いた。
しかしこれはすぐに消去され、ジョンのワウ・ギター、ポールのピアノ、ジョージのマラカスがオーバーダブ。
2月4日の逆行回転のベースとドラムも消去されて、3人によるコーラスを加えた。
しかし、このセッション後の話し合いでシングル曲候補から外す事をジョンは決めるのである。
時は流れて1969年。
1969年1月2日から始まった、トゥイッケナム・フィルム・スタジオでのリハーサル時でもこの曲は演奏されている。
映画「レット・イット・ビー」にもフィルムスタジオ内でこの曲を演奏する場面が確認できる。
これは当初ライブパフォーマンスをやる、という目的だった事からセットリストにこの曲が選ばれたのだろう。
しかしトゥイッケナムからサヴィル・ロウのアップルスタジオに移ってからは一切この曲を演奏しなかった。
後に始まったアップルでの録音セッションでも取り上げられることはなかった。
よって1968年2月以来、ビートルズがこの曲のレコーディングに取り組んだことは一度もないのである。
アルバム「アビイ・ロード」発売後の1969年10月2日。アビイ・ロードスタジオ4号室。
ここで1968年2月8日のマスターテープが引っ張り出されてステレオリミックスが開始された。
曲の冒頭とエンディング近くにライブラリから鳥の鳴き声を挿入して、回転速度をかなり速めてリミックスされる。
鳥のさえずりをこの曲に入れたのは「世界野生動物基金」のチャリティというテーマに合わせたもので、メンバーが望んだ事ではない。
1969年12月12日。
ようやく「世界野生動物基金」のチャリティアルバム「No One's Gonna Change Our World」がリリース。
もちろんビートルズの未発表曲が収録されるのは、このアルバムの大きなセールスポイントとなった。
ビートルズ以外にもたくさんのアーティストが参加した11曲入りのアルバムである。
このアルバムに収められたバージョンは、現在「パスト・マスターズ vol.1&2」 に収録されている。
1970年1月5日。
グリン・ジョーンズはこの日、アルバム「ゲット・バック」を再度リミックスする。
映画が公開される事が決まったために、映画との整合性をとるためにこの曲を「ゲット・バック」に収録する事に決定。
グリン・ジョーンズは1968年2月のマスターテープから、女声コーラス、およびビートルズのコーラスも削除。
これは「オーバーダブをしない」というコンセプトにそって、「それらしく聞かせる」ための処置だった。
エンディングの鳥のさえずりはクロスフェイド処理によって隠された。
しかし、この2度目の「ゲット・バック」も結局は未発表となる。
1970年3月23日。
すでにアルバム「ゲット・バック」は闇に葬られ、アルバム「レット・イット・ビー」としての制作がこの日始まった。
プロデューサーのフィル・スペクターは「映画とアルバムの整合性をとる」という依頼に基づき
映画で演奏されていたこの曲の収録を決める。
この日は後日行われるオーケストラのオーバーダブのためのリミックスが行われる。
1968年2月8日のテープの回転を下げ、女声コーラスなどをすべてカットしている。
1970年4月1日。ビートルズ名義で行われた最後の録音セッション。
この日はリンゴだけが参加してドラムを叩き、女声コーラス14名+オーケストラ36名のオーバーダブが行われた。
このバージョンがアルバム「レット・イット・ビー」に収録されたのである。
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